ある日の昼下がり。 昼下がりとはいっても、陽の光も届かない地下室ではそれを確認する術はないのだけど。 そういえばこの部屋には時計がないなぁ。 別にないからどうということもないんだけど。 せっかくよく利用する部屋なのだから、あれこれレイアウトを弄りたくなる。 でも一応奴隷という立場にある者としてそれはどうなんだろうと思ったりもする。 本音を言えば隅の机の上に観葉植物を置いたり、備え付けられた剥き出しのトイレ用に好きな匂いの芳香剤を置いたりしたい。 「これでもう逃げられませんよー」 …………。 ……極力現実逃避をしていたけど、志乃さんは私を逃がしてくれなかった。 死刑囚が最期を迎える電気椅子よろしく、手足の自由を奪い押さえつける拘束椅子に縛りつけられ、「ふっふっふ」と悪の組織の幹部顔負けの悪い顔をして笑う志乃さんをおっぱいやおちんちん丸出しの素っ裸で見る私。 ……どうしてこうなった。 「マスターはあと2,3時間は帰ってきませんからねー。助けを呼ぼうと思っても無駄なのですー」 「じゃあ志乃さん助けて下さい」 「だめですー」 ご主人さまカムバックなるべく早急に! 「いつもマスターばっかりずるいですー。たまには志乃も楓ちゃんと遊びたいですー」 「………………じゃあ、外で追いかけっこでも」 「……。さて、まずは消毒ですねー」 「選択肢間違えた!?」 私の悲痛な叫びを無視して、志乃さんが奥からごちゃごちゃと備品を取り出す。 何をするのかは聞いていないけど、ちらっとカテーテルが見えたところで、絶対楽しいことにはならないな、と腹を括った。 志乃さんにとっては楽しいんだろうけど。 ノリノリで綿玉に消毒液を付けている姿を見て、そっと嘆息する。 「ちょっとひやっこいですよー」 「うひゃあっ!?」 志乃さんの言葉とともに消毒液の付いた綿玉が私のおちんちんの先、尿道口に当てられ、思わず素っ頓狂な声が漏れる。 恥ずかしいから言ってなかったけど、今私のおちんちんは半分勃起した状態。 それは別に拘束された今の状態に被虐的快楽を感じているとかそういうわけじゃなくて、単純に日常的発情調教の真っ最中だから。 息をするのも一苦労なほど敏感な身体に最近はようやく慣れてきたとはいえ、何をしていなくてもちょっとした刺激、例えばそっと撫でられたり、服が擦れたり、風を感じたり、そういう何気ない刺激だけでも、身体は簡単にスイッチが入る。 まぁ身動きとれない不自由さ、これから何をされるのか分からない恐怖心からくる被虐感がスパイスになっていないとは言えないけど。 裸になって人前に肌を晒している状況だけでも羞恥心から煽られたりするし。 まぁそんなわけで、ちょっと勃っちゃってました。私。 でもそれも消毒液の付いた綿玉のひやっとした感触に萎えちゃいましたけどね。 「あれー、縮んじゃいましたー? こうすれば元通りに戻るかなー。しこしこー」 「しれっと勃起状態がデフォみたいに言わないでください! ……あっ、ちょ、なんでそんなうま……っ、あふっ……!?」 ただでさえ敏感なそこを、さらに底上げで気持ちよくなれるように改造されている私。 そんな一擦り一擦りがすぐさま射精に繋がりそうな快楽の中、それでも志乃さんは絶対に射精まで導こうとせず、絶妙な寸止め具合で手で擦るのをしばらく続けた。 そして、もう限界……! というところで、何かを思い出したようにぴたりと手を止め。 「そういえば勃起させちゃダメなんでしたー」 「生殺しっ!?」 「消毒したら治まるかなー。ぺたぺたー」 「鬼ー! 悪魔ー!」 「すごいですー。おちんちんから涙ぽろぽろー」 「うう……。ジュネーヴ条約違反です……」 寸止めにより尿道口からカウパー氏腺液が溢れだすのを面白そうに拭う志乃さん。 亀頭への刺激に射精することもできず、拭われるがまま冷たい刺激で徐々に勃起を治めていく私。 手足の拘束をぎっしぎっしと揺らしながら、思わずわけの分からない言葉を呟く。 客観的に見ればなかなかカオスな状況だった。 「そしたらこのカテーテルでー」 「ああ……」 やがて勃起も治まり、程よくふにゃってきたところで、志乃さんがゼリーを塗ったカテーテルの先端を尿道口に定め。 「ぶすー」 「うああっ!」 そのままゴリゴリと尿道内へカテーテルを侵入させていく。 普段は出すばっかりの尿道。 ふたなりの私は基本どちらからでもおしっこを出せる。 基本的には女の子の方から出すのだけど、意識をおちんちんへと持っていけば、構造的に出そうとして出せないことはない。 まぁ今のところ射精専用になってる感は否めないけど。 なんにせよ、どちらをとっても出すばかりで、普通は『入れる』という感覚を味わうことはそうない。 まぁ私の場合その普通はあまり当てはまらないのが泣けるところ。 それでも異物感はすごくて、いくら慣れがあったとしても少しでも無理をすればすぐさま痛みが襲ってくるような、薄氷の上を歩くが如きスレスレ感を挿入中ずっと味わうことになる。 「着いたかなー」 「は……ふ……っ?」 とかなんとか考えて意識を逸らしていたら、志乃さんの声が聞こえ我に帰る。 お、終わった……? 「じゃあ女の子の方もー」 「うきゃああっ!?」 終わってなかった! ズズズ、とカテーテルが尿道内を擦り上げる感覚に鳥肌と怖気を感じながら、確かに快感を感じる身体に恨み節を呟いて、大人しくその処置が終わるのを待った。 「そしたら女の子の方のカテーテルは封鎖ー」 「……あ、ふ……。あ、あの、そろそろ、説明が欲しいんですが……」 私の2つある尿道からカテーテルが2本飛び出している。 そのうちの1本をクリップで留めて、もう1本からは膀胱に溜まったおしっこが流れ出すに任せている。 すでに羞恥心は疲れと諦めに上書きされていた。 「んー? 今日は楓ちゃんにジュースをごちそうしてもらおうと思ってー」 「……ジュース?」 まさかおしっこ!? ここにきてスカトロプレイですか!? 非常に嫌な予感に背筋が伸びるも、次に志乃さんが示したものを見てどうやら思い過ごしだと気付いた。 「ほらこれですー。みんな大好きリンゴジュースー」 「……リンゴジュースですね。……ごちそう? それと何の関係が……」 そこまで口にして、さっきの嫌な予感が思い過ごしでは済まなくなってしまった。 「まさかとは思いますが……」 「気付きましたー? じゃあおしっこも全部出たみたいなので『入れますねー』」 「やっぱり鬼だこの人ぉわああああああああっ!?」 志乃さんが手にしたリンゴジュース。 それがシリンジに吸い上げられ、出すものを出し切った膀胱内へカテーテルを通じ流し込まれていく。 「あああああああ……!」 冷たいものが膀胱に溜まっていく違和感。 もはや快楽とはかけ離れた異物感に、私はただ動けない身体を必死に捻りながら喚くしかない。 やがて入れ終わったのか、志乃さんが手を止める。 「こんなものかなー」 「……何か、大切なものを、失った気が、します」 数回に分けて流し込まれたジュースは、たぷんたぷんと聞こえそうなほど膀胱内で存在を主張していた。 いや、実際に聞こえるんじゃないかなぁ……。 今すぐにおトイレに駆け込みたいほどの焦燥感を感じながらも、髪留めのようなものでおちんちんの根元を挟み押さえつけられる。 ついでにおちんちんの方だけカテーテルから解放された。 「あの……、一応聞きますけど、これどうするんですか?」 「飲みますー」 「ですよねー」 「というわけでおっきくなーれー」 「もう好きにして下さい……」 全てを諦めた私に構わず、適度な刺激でおちんちんを刺激する志乃さん。 先ほどよりは優しく、それでも大きくなるには十分の愛撫に私の身体も素直に反応し、すぐさま普段と同じような硬度と大きさを取り戻す。 志乃さんを代弁して言えば、『おちんちんストロー』の完成だ。 色んな意味でちょっと泣きそうだった。 「ではいただきますー」 「はい召し上がれー」 もうヤケクソになって応答する。 志乃さんは椅子に拘束された私の股の間にしゃがみこみ、目の前にあるおちんちんにそっと手を添え、その小さな口をキスするように尿道口にあてがう。 ああ、こんな状況でもなければ、志乃さんのその背徳的な容姿と相まってすごく興奮する光景なのに! 加減を見ながら圧迫された尿道を適宜解放され、ジュースが駆け昇る感覚が、排尿の快感をもたらしながらもどこか虚しい。 しかもご丁寧にチューチューとストローを啜る風の効果音まで聞こえてくる。 思わず溜め息が漏れた。 「……?」 それが聞こえたのか、志乃さんがおちんちんストローを啜りながらも上目遣いでこちらの様子を伺ってくる。 「……っ」 あ、やばい。それは卑怯だ。上目遣いはマズイ。 徐々に薄れゆくジュースの残留感。 虚しさから解き放たれようとしたその先に感じ取ったのは、『見た目だけならフェラ』という状況だった。 しかも、志乃さんは、その、……可愛い。主に小さい妹的な意味で。 何だか自分がとんでもなく変態に思えるけど、でも実際こうして目の前でおちんちん舐められて(何故か)潤んだ瞳で上目遣いされたらいくら同性でもヤバいですって! 「あ、あの、志乃さん……。もう……」 「もう、我慢できないですかー?」 「や、ちがっ……! そうじゃ、んっ!」 もうジュースもなくなって、おしまいですよね、って、そういう意味だったのに。 志乃さんは私が内心たまらなくなったのを見逃さず、小悪魔のような笑みを浮かべて、ずずずずーっとバキュームを開始した。 「うあっ!? それ、だ……めっ!?」 それまでの愛撫とは違って、完全に吐精を目的とした刺激。 おふざけとはいえ、これまでまがりなりにも弄られ続けたおちんちんはその刺激に耐えられず、瞬く間にジュースとは違う、白いものを吐き出そうと脈動する。 「あ、くっ……! で、でちゃ……!」 「だめですよー」 そして、もう出る! というところで、またしてもお預けを喰らう。 パッと口も手も離れ、押さえるものがなくなったおちんちんは、まるで癇癪を起こした子どものようにビクンビクンと跳ねまわる。 「あああっ!? うぐっ……! な、なんで……!?」 「志乃が飲みたいのはジュースなのですー。それに、『それ』はマスターだけですからー」 私の懇願にも似た疑問に、志乃さんは「ふふふ」と言わんばかりに人差し指を口元に当てて私を諭す。 『それ』というのに一瞬思い当たらなかったけど、すぐに『私を絶頂させる権利』のことだと脳内変換した。 「あ……う……」 「……でも、それだと可哀想なのでー」 「……え? あ、あああああっ!?」 イかせてもらえない。 その事実に打ちひしがれる私を見かねたのか、志乃さんが期待を抱かせるような言葉を呟く。 その言葉の真意を探ろうと顔を上げたところで、お尻に冷たい感触を得た。 「吐精『は』させてあげますー」 「うあっ! あっああああっ!?」 椅子の下に移動した志乃さんの腕が上下しているのが分かる。 私は椅子の下に穴が開いていることに気付かなかったことより、お尻の中にある異物が前立腺を刺激していることで頭がいっぱいになった。 「あくっ……!? うああ……ああ……」 普通、ふたなりに前立腺があるのかと言われれば、それは天然か人工かでも変わるのであるとも言えるしないとも言える。 私の場合は人工だけど、性奴隷扱いだったので後天的にある。 より性奴隷を嬲る個所を増やすという目的以上の意図はなかったんだろうけど、その意図が憎らしいことにたった今ばっちり機能している。 「あっで、でて、るっ!? いやっ! こん、なのっ……!」 その感覚が嫌なわけじゃない。 自分で言うのも何だけど、性奴隷として暮らしていた以上はそれなりにお尻も開発されているし、快感の一つも味わえる。 ただそれを上回るほどの虚無感を、この責めは与えてくる。 志乃さんが言った、『吐精』。 まさにそれは目の前で起こっている。 おちんちんの先、尿道口から白濁した精液が、ドロリドロリと湧き出すように零れる。 私に、射精の快感を味わわせないままに。 「いやああっ!! イきたい! 射精したい! ぴゅっぴゅさせてえええっ!!」 「だめですー。大人しくトロトロおもらししましょうねー」 不自由な体を精一杯暴れさせながら懇願する私に、志乃さんは相も変わらず冷静なまま、淡々と前立腺への刺激を止めない。 今日ここに連れてこられて、今ほど手足の拘束が恨めしく思ったことはない。 自分で! 自分の手で! おちんちん擦って、思い切り射精したい! そんな願望も叶わず、ただごぷごぷと漏れ続ける精液。 私に快楽を、射精の快感を与えてくれるはずだったそれが、ただ虚無感だけを残しながら、次々と無駄に失われていく。 もはや私の中には、「気持ちよく吐き出したい」という言葉しか浮かんでこなかった。 「……はい、終了ですー。楓ちゃん、お礼はー?」 「……ありが、とう、ございま、した」 奴隷として、後輩として、挨拶を促され、応える。 最後にきっちり礼節を持ってくるあたり、志乃さんはご主人さまサイドにいるんだなぁ、と関係ないことを思った。 「どういたしましてー。それと、志乃もありがとうですよー。ジュースおいしくいただきましたー」 「ど、どういたし、まして……」 私の若干乾いた声ににっこり笑顔を一つ。 私に施された拘束を一つひとつ解いていく志乃さんを視界に納めながら、私はゴツンと後頭部を椅子に預けた。 あー……、疲れた……。 ▼ 「……で、その後ちゃんと洗浄と消毒はしたのか」 「も、もちろんですよー。ばっちりしっかりー」 「ふむ。まぁどちらにせよ志乃は後で地下室な」 「ふにゃーっ!? お豆ブラシの刑は嫌ですーっ!?」 あの後、解放されてぐったりしているところにご主人さまが帰ってきた。 そして、志乃さんは呼び出され、どうやらお仕置きが決まったようだった。 「いや、今時間あるから、先にやってしまうか。ほら、志乃行くぞ」 「にゃーーっ!? 告げ口なんて卑怯ですにゃー!!」 さて、なんのことやら。
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