私にとって、お姉さまの手はご褒美の象徴でもある。
ペットプレイをするようになってからというもの、私は快楽を求め、安寧を求め、高揚を求めていたわけだけど、それらを与えてくれるのは、往々にしてお姉さまの手によってだったからだ。
「どうしたの、ぼうっとして」
「……え、あ、な、何でもないです……」
だから時たまこうしてお姉さまの手に見惚れるのも仕方のないことなのだ。
「ほかの番組見たい? 別に良いわよ。あたしも好きな俳優が出てるからこれ見てるだけだし」
「え、と、そういうわけでは……。私も好きですし、この人」
「そう。でもこの一緒に出てる芸人は嫌いなのよね。必死な感じが逆にうざいでしょ」
「き、厳しいですね……」
あーだこーだと好きな俳優以外の共演者をこき下ろしながら、おせんべいを食べるお姉さま。
手に取ったそれを口元に運ぶ動作を、ついつい目で追ってしまう。
「……ん、CMのあいだにトイレ行ってこよ」
そうして番組が途切れたところで席を立つお姉さま。
テレビから流れる「今でしょ」という声を聞き流しながら、その後ろ姿を見送る。
……ああ、『だめな日』だな、今日は。
そわそわしているのが自分でもわかる。お姉さまの手ばかり見ているのがその証拠だ。
もちろんお姉さまの手は白くて細くてきれいだから、見惚れてもおかしくはないけど、一般的な感覚からすれば、いつまでもそれを追いかけるのは少し異常だと思う。
だけどそこにはちゃんと理由があって、それは今日の私の状態にも関わっているのだ。
いくつかある性癖が日によってばらばらに出てくるムラッ気のある私は、たまにこうしてどうしようもなく、お姉さま手ずからの愛撫を身体が欲してしまう日がある。
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