たとえ冥闇に沈もうとも【#2】

 ある日。
 書斎へ戻ると、机の上に見慣れない本が一冊置かれていることに気付いた。

「こんな装丁の本、あったか?」

 なかなかに重厚な装丁のその本はかなり分厚く、活字本にしては大きい。
 奇妙に思いながら手で触れると、ページ一枚一枚の厚みが思っているそれと違った。

「なるほど、アルバムか。……しかし、何故ここにアルバムが?」

 それは写真機によって撮られた写真を綴る本だった。
 写真機は、もともと専業の写真家しか持つことのない仕事道具だった。それが最近ようやく個人で持ち運べるほどに小型化されたものの、非常に高価であり、一般市民に手が届くものではなかった。
 とはいえ、うちはそれなりに裕福だ。写真機の一つや二つ、持っている。ついこの間も、いや街に出かける度、ヒカゲにねだられていくつも写真を……。

「……」

 考えを一旦止め、非常に嫌な予感を嚙み潰しながら、アルバムをそっと捲る。

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