「さて、じゃあ着替えてもらおうかな」 「……あの、私なんにも説明されずに連れてこられたんですけど」 「あれ、そうだっけ。まぁいいでしょ。まずこれね」 「よくないですけど……あれ、これ制服?」 「そ」 「でも着てたやつじゃないですね」 「そういやきぃちゃんとこセーラーじゃなかったわね」 「そうですね。だからちょっと憧れがあったりもしたんですけど」 「じゃあちょうどよかったじゃない。さぁ着替えて着替えて」 「……なんかうまく乗せられてる気がする」
「いいじゃんいいじゃん」 「なんか……こそばゆいというか、コスプレしてる気分になりますね」 「何言ってんの、ついこの間まで制服着てたじゃない」 「そ、そうなんですけど……」 「そう言う割によく写ってるわよ。あ、引きも撮っとこう」
「やっぱ似合うわね」 「あ、ありがとうございます……」 「何着か持ってきたし、タイも色々あるから、着替えながら行こっか」 「は、はぁ……」
「で、どこまで行くんですかこれ」 「学校」 「……はい?」
「学校来ちゃいましたけど……」 「そうね」 「捕まりません?」 「大丈夫よ。ここ廃校だから」 「な、なんだ……よかった」 「じゃあ入ろっか」 「ちょ、ちょ、なんで入れるんですか!?」 「なんでって、あたしのだから」 「あたしのって……」 「廃校なんてそんな高いもんじゃないわよ」 「……そういえばこういう人だった」
「通っていた学校でも、屋上は入ったことないですね」 「今は立ち入り禁止のところも多いみたいだしね」 「……で、そろそろ今日の趣旨を説明してもらってもいいですか」 「趣旨と言っても、そのままよ。制服姿のきぃちゃんを撮影して、”きぃちゃんすこすこセット”作るってだけ」 「”きぃちゃんすこすこセット”!?」 「ま、あとは……。こうして学生の姿で学校に来て、屋上でおしゃべりするなんて、青春っぽいじゃない?」 「お姉さま……」 「お互い同意の上で、趣味として楽しい時間ではあったけど、それはそれとして、やっぱり普通の青春っぽいのも味わっておかなきゃ損じゃない、みたいな」 「……」 「あくまで疑似だから、取り戻せるとは思ってないけど。だから趣旨が撮影っていうのは本当。可愛い子着せ替えるのも楽しいしね」 「……」 「……」 「青春って言うのなら」 「うん?」 「学生同士、お姉さまも制服姿じゃなきゃ、ですよね?」 「……いやいや!? 無理でしょさすがにそれは……!」 「いけますって! ほら、まだ着てない制服ありますよ!」 「だから無理だって! サイズもきついし、年齢的にも……!」 「お姉さまなら大丈夫!」 「強引! そんなに”おばさんきつきつセット”が見たいわけ!?」 「”おばさんきつきつセット”!?」 ▼
「おっと、そろそろ暗くなってきたわね」 「そうですね」 「じゃあ帰りますか」 「あ、あの、お姉さま……」 「なに?」 「青春……って話なんですけど」 「うん」 「夜の校舎を探検、というのも、青春ですか……?」 「……きぃちゃん」 「……はい」 「まずは音楽室ね」 「はいっ」
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